2月。
それは受験生にとっての「ゴール」であると同時に、新高3生や既卒生(浪人生)にとっては、来年の合格を決める「スタートライン」でもあります。
学習塾を経営し、5000人以上の受験生の合否を見届けてきた私の経験から、断言できることがあります。「第一志望に合格できるかどうかは、「環境選び」で8割決まる」ということです。
「どの教材を使うか」「どの先生に習うか」も大切ですが、それ以上に重要なのが、これからの1年間、あなたが毎日身を置く「受験環境(システム)」です。なぜなら、その環境との相性が、あなたの学習の「質」と「継続率」を決定づけるからです。
今回は、新年度に向けて進路に迷う高校生・保護者の皆様のために、「大手予備校」「個別指導塾」「自宅学習(宅浪)」の3大選択肢について、教育現場の事実とデータに基づいたメリット・デメリットを徹底解説します。
忖度なしのリアルな比較です。ぜひ、後悔のない選択のための判断材料にしてください。
まずは、多くの受験生が最初に検討する「大手予備校」です。駅前に校舎を構え、有名講師が多数在籍する、いわゆる「予備校」です。
大手予備校の看板講師の授業は、間違いなく日本最高レベルです。複雑な物理の概念を日常会話のように噛み砕き、膨大な世界史の流れを一本のストーリーとして見せる技術は、まさに「職人芸」。知的好奇心を刺激され、「分かった!」という感動を味わえるでしょう。
長年蓄積されたデータは、大手の最大の武器です。「この大学のこの学部なら、偏差値〇〇でA判定」という精度の高さは、受験戦略を立てる上で非常に強力な羅針盤となります。手に入れにくい過去問なども予備校が持っていることが多く、さらに、講師一人ひとりがプロとして高い知識と経験を持っています。
自習室に行けば、朝から晩まで必死にペンを走らせるライバルがいます。「あいつもやっているから、自分も負けられない」という集団心理が、モチベーション維持に大きく貢献します。また、自習室も広く、使いやすいです。空き教室も自習室として使っていいことが多く、自習スペースで困ることはありません。
実際にあった相談ですが、大手予備校の最上位クラスに入っただけで安心し、授業の予習復習に追われ消化不良のまま秋を迎えました。結果、模試の判定はEのまま……。「授業を受けている自分」に酔ってしまった典型例です。
これが最大の落とし穴です。プロ講師の授業はあまりに分かりやすいため、聞いただけで「自分もできるようになった」と錯覚してしまいます。しかし、入試本番で問われるのは「授業の内容を再現できるか(出力できるか)」です。授業を聞く(インプット)だけでは、偏差値は1ミリも上がりません。さらに、授業のコマ数を多くとればとるほど、宿題の量も増えるため、自習時間での演習が不足し、成績が伸び悩む生徒が後を絶ちません。
集団授業は、あらかじめ決まったカリキュラムで進みます。「自分は数学のベクトルだけ苦手だから、そこだけ重点的にやりたい」と思っても、授業は止まってくれません。一度ついていけなくなると、雪だるま式に未消化部分が増え、最終的には授業に出るだけの「お客さん」になってしまいます。
残酷な事実ですが、大手予備校の実績(東大・京大・医学部合格数)の多くは、元々優秀な上位クラスの生徒が稼ぎ出しています。そして、その上位のクラスでも、しっかりとした添削などは受けられないことがあります。これは予備校の先生は、いろいろな校舎を行ったり来たりせざるを得ず、能力が高い先生であればあるほど多忙なためです。
【結論】大手予備校が向いている人
■基礎学力が高い方
■授業を聞きたい方
■自分で正しい学習計画を立てられる方
■自習室さえあればいい方
次に、近年需要が高まっている「個別指導塾」です。先生1人に対し、生徒1人〜2人で指導を行うスタイルです。
「部活が忙しいから週1回、20時から」「英語の文法だけ中学レベルからやり直したい」。こうした個別の要望に100%応えられるのが強みです。集団授業のように「すでに分かっている単元の解説を聞かされる」という時間の無駄がありません。
集団授業では、手を挙げて質問するのが恥ずかしいという生徒も多いでしょう。個別指導なら、隣に先生がいます。「ここが分からない」とすぐに言える環境は、学習のつまずきを即座に解消し、挫折を防ぎます。
ペースメーカーになってくれる、というのも、個別指導塾のメリットです。「今週はここまでやろう」と毎週の宿題を管理してくれるため、何をすればいいか迷うことがありません。特に学習習慣が定着していない生徒にとっては、強制力のあるペースメーカーとして機能します。
多くの個別指導塾では、大学生のアルバイト講師が指導にあたります。もちろん優秀な学生もいますが、指導経験や受験知識には個人差があります。「友達感覚」になりすぎてしまい、緊張感が欠如する(ぬるま湯環境になる)リスクがあります。私も、個別指導塾でアルバイトをしたことがありますが、いい講師に当たれば最高/ダメな講師に当たればお金と時間のムダ、というのが現実です。
目の前の「分からない問題」を解説することに終始してしまい、大学入試全体を見据えた「戦略的な指導」が不足しがちです。「定期テストの点は上がったが、模試の偏差値は変わらない」という現象が起きやすいのはこのためです。
【結論】個別指導塾が向いている人
■オーダーメイド性の高い勉強がしたい方
■集団の中では質問しにくいシャイな方
■「何を勉強すればいいのか」の指示を細かく出してほしい方
最後に、予備校や塾に通わず、自宅や図書館で、全部自力で学習するスタイルです。近年はYouTubeやスタディサプリなどの安価で質の高い映像授業が普及し、選択肢として現実味を帯びてきました。
通塾にかかる移動時間はゼロ。授業に拘束されることもありません。24時間をすべて自分の弱点補強に充てることができます。理論上、最も効率的に成績を上げられる可能性があるのはこのスタイルです。
かかる費用は参考書代と模試代、そしてオンラインサービスの月額料金程度。年間100万円近くかかる予備校に比べ、親御さんの経済的負担は大幅に軽減されます。
「朝起きなくても誰にも怒られない」。この自由が、最大の敵となります。昼夜逆転生活に陥り、勉強時間が激減するケースは枚挙にいとまがありません。また、話し相手がいない孤独感は想像以上で、夏頃にメンタルを崩してドロップアウトする受験生が多くいます。
自分の勉強法が正しいのか、今のペースで間に合うのかを判断してくれる人がいません。間違った方向に努力を重ねてしまい、気づいた時には取り返しがつかない時期になっている……という悲劇が起こり得ます。
これまで10年以上、大学受験の専門家として活動してきましたが、成功率は極めて低く、はっきり言っておすすめしません。
【結論】自宅学習が向いている人
■絶対に経済的・地理的な理由などで、予備校が使えない方
ここまで3つの選択肢を見てきましたが、読者の皆さんはこう思ったかもしれません。「どれも一長一短で選べない」と。
実は近年、大学入試の難化(特に共通テストの思考力重視化)に伴い、「第4の選択肢」とも呼べる新しいスタイルが注目されています。それは、これら3つのメリットを組み合わせ、デメリットを相互に補うスタイルです。
例えば、私の運営する「篠原塾」は、
1:授業が必要であれば「プレミアムコース」
2:個別指導が必要であれば「1教科集中コース」「プロ講師コース」
3:自分で勉強したいのであれば「戦略立案コース」
と、ニーズに合わせてコースを分けています。大手予備校の情報量と、個別指導の面倒見の良さ。本来なら両立しないこの2つを、篠原塾は『戦略立案』という独自の切り口で統合しました。
私が経営する学習塾では、以下のような視点を取り入れています。これは手前味噌な話ではなく、皆さんが塾を選ぶ際にぜひ確認してほしい「チェックリスト」でもあります。
主観的な勘や経験だけでなく、客観的な模試のデータや学習履歴を分析があるかどうかが重要です。
「今、私は何をすべきか」を個別具体的に提示してくれるかが重要です。参考書のルート作成などは、インターネット上にあるような「みんなと同じ計画」では到底難関大学には合格できません。
指導はただ「教える」だけではなく、生徒の不安に寄り添い、小さな成功を共に喜んでくれるパートナーであることが重要です。
どの環境を選んだとしても、最終的にペンを握り、問題を解くのはあなた自身です。「大手予備校に行けば合格させてくれる」「個別指導なら成績が上がる」という受動的な姿勢では、どの環境でも結果は出ません。
今、この文章を読んでいるあなたが高校2年生(新高3)なら、今すぐ動き出してください。もし浪人を決意したなら、この2月の過ごし方で来年の春が変わります。
もし、自分の現在地や最適な学習法について迷っているなら、ぜひ一度、プロの意見を聞きに来てください。あなたの「勝ち方」を、一緒に戦略として描きましょう。
篠原好(しのはら・このみ)
篠原塾塾長 受験戦略家
京大模試全国1位。京都大学総合人間学部卒。
YouTube6700万回再生・登録者11万人突破。京大に4年連続で合格者を輩出している「篠原塾」の塾長。
「いつまでにどの教材をやるか」を決める受験戦略で、生徒の偏差値を3か月で33.9UP。
著書『逆転合格90日プログラム』はAmazonランキング1位。