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専門学校化する大学、
大学化する専門学校、
どちらが得か

高校3年生になると、卒業後の進路について、あらゆる選択肢を示されます。
まず、進学か就職か。
就職を選んだ場合は公務員か民間企業か。
進学であれば大学・短大・専門学校。志望する学校については国公立か私立か、学部や学科、そして受験については総合型選抜・学校推薦型選抜・一般選抜のどれが合格に近づく最適解であるのかなど、実にさまざまです。
何を選ぶのが正しいのかは、人それぞれではありますが、高校生のみなさんが卒業後の進路で「進学」を選んだ時、特に大学と専門学校の二者択一の方法について、ひとつの考え方を示してみました。

行けるなら4年制大学へ進学させたい親心

高校生が模擬試験などを受験して、例えば偏差値が60を超えていた場合、教師からは大学進学を勧められます。同様に、校内での成績が優秀であれば、指定校推薦枠などを使っての進学を勧められると思います。
最近では少子化の影響もあるせいで、偏差値45から55くらいと判定された人たちにも、地元や近郊の高校に指定校推薦枠を多く振り分ける私立大学も多くあります。
今の高校生の親世代、つまり年齢が40~50くらいの世代にとっては、当時の進学状況が厳しかったこともあって、「自分の子どもに中堅私立大学への指定校推薦が与えられる」とわかれば、大喜びで飛びつく親も多いはずです。
ところが、昨今の円安や物価高から大学や専門学校の値上げが激しく、生活費の高騰もあって、「進学するのであれば元がとれるところ」という思考になりつつあります。「元がとれる」というのは、つまり確実かつ安定した企業への就職ができるところということです。

有名企業とのコラボ・インターン・就職実績を前面に押し出す私立大学

2025年夏、私はいくつかの私立大学のオープンキャンパスを、一般の高校生に同行して取材しました。その中で目を引いたのが、経営学部や商学部を有する大学でした。偏差値50程度とされるその学校の配布物には、有名企業への就職実績、授業に企業の幹部を招いての講義、企業と学生で商品開発、企業へのインターン派遣実績など、学生の就職活動をあらゆる面からサポートすることを約束しているかのような記述が目立ちました。
かつて、大学の学校案内といえば、何が学べるか、どのような研究がなされているかが書かれていたものですが、最近は「この大学を卒業すれば、こういう企業への就職が期待できる」といった、就職サポートの手厚さをアピールしていたのです。
実は、このような、「我が校で学べば優良企業への就職は確実」と示唆する学校案内は、かつては就職実績をアピールする専門学校の手法でした。
「専門学校」は職業教育を行う様々な形態の学校の中で、「専修学校」に属する学校のさらに「専門課程」のことを指します。つまり、専門性の高い職業教育を行っているのですから、とにかく職業の即戦力となれるような技術や資格を取得させることを目指している学校です。
その専門学校は、より専門性を高め、企業との連携を密にした「職業実践専門課程」と認定する制度が2013年から始まりました。つまり、企業からの講師派遣・企業へのインターン・企業との連携・それらの情報公開などを適切に行う専門学校を、文部科学大臣が認定することで、進学希望者が情報を得やすくするという取り組みです。
私が抱いた既視感は、その専門学校の10年以上の取り組みが、4年制大学のオープンキャンパスで見られたからでした。
正直なところ、4年制大学があからさまに就職率をアピールする時代になったことに、違和感を禁じ得ませんでした。

卒業生就職率が専門学校に近づく4年制大学

出典:学校基本調査より筆者算出。

このグラフは文部科学省の学校基本調査をもとに、筆者が算出・作成した就職率の推移です。かつて2000~2013年くらいまでは、専門学校が短大・大学を抜いて圧倒的な就職率を誇っていたことから、このグラフは専門学校の入学案内などに多用されていました。
近年になると、短大の就職率が専門学校に迫り、2018~2021年は、専門学校を超える事態が起こったため、このグラフはあまり使われなくなりました。ただし、この現象は、短大の人文系・社会学系の学科など、「就職につながりにくい学科の統廃合・4年制大学への改変」などによって起こった一時的な現象のため、コロナ禍の採用控えを経て、現在に至ります。
このグラフによれば、大学就職率は、就職氷河期の最悪の年とされた2003年の55%から、2019年の78%にまで伸びており、直近の2024年では76%程度となっています。ここからわかることは、「就職できない卒業生」に対する問題の解決策が、なりふり構わず就職率を上げるといった、大学の専門学校化だったのではないでしょうか。
なお、厚生労働省などが算出する同趣旨の「就職内定率」は、分母が「就職希望者」です。上記の表の示す「就職率」は「卒業者」が分母ですので、数字が大きく異なります。

大学に近づく専門学校

専門学校は職業教育を行う学校ですから、2年ないし3年で、あらゆる資格を取得させ、その上で就職先を確保するということに尽力してきました。
専門学校は大学とは違って、誰もが知っている有名校出身か否かではなく、採用後、従業員を適材適所に配置するため、必要な技術や資格を有しているかどうかが重要とされています。つまり、「スペシャリスト」を養成するのが専門学校です。
そのため、就職についてのノウハウや実績は文句なしといったところですが、就職後は大卒者に比べると低く扱われる、ある意味、差別的な処遇をされてしまう問題がありました。
一般に、大学卒業者は特定の専門分野を持たないけれど、幅広い知識やスキルを駆使して様々な業務や状況に対応できるオールラウンド型の人材、つまり「ゼネラリスト」として重宝される立場です。
こうした処遇を改善するために、専門学校は2005年から「高度専門士」という称号が得られる4年制の課程を創設し、これは就職や進学に際して大卒に準ずる学歴となりましたが、社会への浸透はいまひとつだったことから、2019年に「専門職大学」という、専門学校としての機能や就職に対するノウハウを有する大学を創設しました。また、大学を持たずに大学院を運営できる「大学院大学」、そして土地や建物などの設備投資が限定的な「通信制大学」を創設する専門学校も出てきました。
4年制大学であれば学士、大学院であれば修士などを授与できることから、国際的にも認められる学校になったということになります。

知名度・ブランド重視か、資格取得を重視するか

大学でなければできない教育、専門学校でなければできない教育の差異が判然としなくなってきた昨今。どのように検討すべきか迷うところです。
自宅から同じ距離、同じ学費だった場合、どちらを選択するかは、もはや人それぞれですが、学校名から想像するイメージや取得できる資格、そして学びへのモチベーションで判断するしかなくなってきたともいえます。

松本肇(まつもと・はじめ)
教育ジャーナリスト

専門分野は大学改革支援・学位授与機構を活用した学位取得方法、通信制大学・通信制高校・高卒認定試験・専門学校など。著書「短大・専門学校卒ナースが簡単に看護大学卒」等。
いわゆる「学歴フィルター」と呼ばれる価値観よりも、大学で得られる「アカデミックスキル」という数値化しにくい教育の有無に関心がある。
日本テレビ「DayDay.」、フジテレビ「めざまし8」、「ホンマでっか!?TV」、ABEMA「アベマプライム」などでゲストコメンテーターを務める。