高校から取り組めば有利なのは、
あの分野!!
高校から取り組めば有利なのは、
あの分野!!
2025.7
高校から取り組めば有利なのは、
あの分野!!
高校から取り組めば有利なのは、
あの分野!!
2025.7
大卒就職を巡っては、学生側に有利な「売り手市場」が続いています。一方でスキルが身に付けられないと判断すれば、早期転職もいとわない新入社員も増えています。そんな時代にあって大学選びでの狙い目は、いわゆる数理・データサイエンス・AI(人工知能)教育です。しかも、そうした情報系の教育に、高校段階から力を入れようという動きが加速しています。情報活用能力を発揮して探究学習に取り組めば、将来の可能性が広がるかもしれません。
AIと対話しながら自動的に自然な文章や画像を作る「生成AI」を活用することは、今や多くの職業で課題になっています。しかし、デジタル人材は将来的にも不足すると見込まれています。
そこで政府は、小学校から大学、社会人に至るまで、人材育成に力を入れています。高校で全員必修の科目になった情報Ⅰが大学入学共通テストでも出題され、情報Ⅱを開設する高校が急速に増えているのも、その一環です。
注)中教審教育課程企画特別部会(令和7年5月12日)論点資料から転載
大学・高専では、デジタルを含む成長分野への学部転換を支援しており、2023・24年度に計126校が特定成長分野(デジタル・グリーン等)、計89校が「高度情報人材育成に向けた機能強化」の支援を受けています。25年度もそれぞれ27校、19校が追加されることが決まりました。これらは国公立を問わず、また全国にわたっています。
注)大学・高専機能強化支援事業の初回公募選定結果から抜粋(令和5年7月21日)
https://www.mext.go.jp/content/20230721-mxt_senmon01-72.pdf https://www.mext.go.jp/content/20240624-mxt_senmon01-000027827.pdf https://www.mext.go.jp/content/20250625-mxt_senmon01-000027827.pdf
近年では、こうした理工系学部・学科に限らず、文系も含めた全学生に数理・データサイエンス・AI教育を課す大学も広がっています。どんな仕事にも必須になりつつある、との考えからです。
高校生の中には、どうしても情報科を含めた理数系に苦手意識を持っている人も少なくないでしょう。多くの高校で2年生など早期に文系・理系のクラス分けをするため、文系を選択した生徒は受験に関係ない理数系科目を早期に「捨ててしまう」ことになります。「社会に出たら理科は必要なくなる」と回答した日本の高校生は45.9%と、米・中・韓の各国と比べ最も高くなっています(国立青少年教育振興機構調べ)。そうした状況を何とか変えようと、中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)では、学習指導要領を改訂する際に、情報活用能力の育成を強化することを検討しています。小学校では現在、プログラミング教育を体験する程度ですが、「総合的な学習の時間」の中に情報を扱う領域を特設。中学校では、技術・家庭科から技術分野を独立させて、材料・加工や生物育成など他の領域でも情報活用を進めます。その上で高校を含め、総合の時間で、情報活用能力を発揮して探究的な学びを行います。
中教審教育課程企画特別部会(令和7年5月22日)論点資料から転載
小・中・高校の12年間をかけて情報活用能力を系統的に育成することで、大学等での幅広い層に数理・データサイエンス・AI教育を行うとともに、高度専門人材も育成したい考えです。
指導要領が改訂されても全面実施となるのは2030年度以降で、今の高校生には関係ない話だと思いがちです。しかし中教審は25年度中の答申が見込まれており、それを受けて前倒しで総合の時間を中心に情報教育の強化が行われると予想されます。何より大学等では、先に見たようにデジタル・グリーン分野への学部・学科転換が始まっています。理数系に苦手意識がある生徒でも、総合の時間で自分が興味を持つテーマを探究する際、情報を活用することで、実際に役立つことが実感できて興味が湧くことでしょう。ひいては大学を経て、数理・データサイエンス・AI人材となる道を開いてくれるかもしれないのです。
渡辺敦司(わたなべ・あつし)
教育ジャーナリスト
1964年北海道出身、横浜国立大学教育学部卒。教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て98年よりフリー。主著に『学習指導要領「次期改訂」をどうする―検証 教育課程改革―』(ジダイ社、2022年10月)。